降雪や凍結で山道が危なくなる前に、厳しい札所から先にまわろうとの事で、山間部の札所への参拝です。
秩父札所きっての難所といえば、32番の奥の院でしょう。
まず、お寺へ辿り着くまでが大変!
車で行けばお寺の目の前まで簡単に行けますが、徒歩巡礼の場合は駅から長い時間バスに揺られ、さらにバス停から寺まで長時間歩くのです。
そしてやっと辿り着いた32番札所は麓の本堂から、少し山を登った所に観音堂があり、ここで参拝を終えて引き返す事もできます。
観音堂を少し下ったところに、奥の院への入り口があります。
沖縄のセーファーウタキを彷彿とさせる、巨石の隙間をくぐり抜ける門です。
ここを抜け、さらに上を目指してかなり険阻な山道と岩山を上り詰めたところに奥の院があり、絶壁の岩の上に仏様がおられます。
私達も奥の院を目指して、細くて険しい岩山の道を進みました。
距離はさほどないのですが、とにかく急勾配と岩を登らなければいけないのが難所のゆえんです。
がんばって頂上付近へ辿り着くと、この看板が。
左側へ進み、鎖で絶壁を登ると天空の大日如来様が!
小さなスペースで身を護る柵などもなく、ただ切り立った岩の上に仏様と自分だけ、という凄い空間が待ち受けています。
ただし、とても危険なので譲り合って慎重に登り降りします。
上のスペースは安全を考えると、大人2人でも危ないかなというくらいの狭さです。
降りる時はものすごく怖いです。
ちなみに高所恐怖症の姉は登れませんでした。
先ほどの道しるべを右へ進めば、舟の形をした断崖絶壁の岩山の舳先に観音様がおられます。
素晴らしい眺めです。
苦労してやっと辿り着いた天に近いこの場所で、心静かに観音様に祈りを捧げます。
そのために、ここまで来たのですから。
心願を胸に秘め、仏様にただ祈りを聞いて頂きたいから、登る。
ひたすら歩く。
これが巡礼。
昔、先生が仰っていました。
行というのは、やっている最中は只々辛くて、何もわからない。
やり通してみて、終わって初めて、「あ~、やって良かったな」と実感できる事だと。
巡礼もそれに近いかもしれません。
車で廻れば、各札所はあっという間。
けれど、それでは、心は救いきれないのでは。
毎日せちがらく時が流れていく中で、巡礼の時だけはひたすら歩き、観音様の前では自分の心と向き合って祈る。
純粋さがあるのです。
ただの納経帳スタンプラリーにしないため、真剣に深く祈るために、自らの足で難所へも挑んでいくわけです。
歩きの巡礼は時に厳しいけれど、可憐な野辺の草花や綺麗な川の流れ、どっしり聳える山々、豊かな自然の懐に抱かれる安らぎと、巡礼に親切にしてくださる方々に見守られて、気持ちは前向きに足が進みます。
足の悪い母も、頑固に登ると言い張り、32番の奥の院まで杖をつきながら到達する事が出来ました。
後で無理が祟らないかと心配でしたが、疲れ以外は特に問題なかったとのこと。
ご加護に感謝しつつ、難所を終えてひと息ですが、まだまだ巡礼の旅は続きます。